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僕らが教えます! 富山大学 芸術文化学部 第6回

富山大学芸術文化学部 デザイン工芸コース 林 暁先生

伝統工芸を基本としながら、新しい技術もためらわずに積極的に取り入れることで、新しい視点で現代の美を追究していくのがデザイン工芸コースです。同コースをこの春より担当される林暁先生は、富山大 芸術文化学部の前身である高岡短期大学時代は産業造形学科で教鞭を執られていました。最先端のコンピュータ技術も道具の一つとしてとらえ、独自の美を追い求める林先生のご専門は、漆[うるし]工芸。プロダクトデザイン分野に、古来の伝統技術をグローバルな視点から見直し、より自由な発想力を備えた伝承者育成を目指している林先生に、今後の展望等を語っていただきました!

富山大学芸術文化学部 デザイン工芸コース 林 暁先生

富山大学芸術文化学部 デザイン工芸コース 林 暁先生

林先生は、漆工芸がご専門。しかしその一方で最先端のコンピュータ技術を応用した造形技術も研究されているという。一体どんな方だろう? と思い話を伺ったら、熱く夢を語り、無邪気にコンピュータをいじる、とても素敵な先生でした。

林暁:東京芸術大学美術研究科修士課程卒。同大学非常勤講師を経て、1995年前高岡短期大学准教授就任、2005年秋より富山大学 芸術文化学部 デザイン工芸コース教授に就任。日本工芸会正会員。専門は乾漆による器物の造形制作、およびコンピュータを用いた漆芸の造形および加飾。2006年、タケオカ自動車工芸(富山市)の一人乗り電気自動車の開発に参加し、デザインを担当する。

漆[うるし]工芸って?

林 暁先生

例えば自動車のことを考えてみましょう。汚れてくすんでいる車よりも、ワックスを塗ってピカピカに磨かれた車の方がきれいに見えますよね。モノは、よく磨き込まれてツヤを保った状態が単純に美しく見えるんです。

モノの表面が美しいと、そのモノの「形」をより美しく見せることができます。では、モノの「形」を最も効果的に美しく見せられるのは何か? 私にとって、それが漆なのです。

漆はとても色々なものに塗ることができます。木材の上に塗ることもできますし、乾漆といって布の上に塗る技術もあります。要するに何の上にでも塗ることはできるのですが、だからこそ、漆は美しい「形」のものの上に塗られるとよく引き立ちます。漆のツヤというのは、深く、柔らかく、全反射して、そのモノの「形」をとても効果的に引き立てるのです。だからこそ、漆工芸には、美しく塗る技術と同時に、美しい「形」を作り出す感性と技術が必要になってくるのです。

こんなことを教えています!

林 暁先生

私が主に担当しているデザイン工芸コースでは、漆工芸について専門的に学ぶこともできます。漆の上に金粉や貝殻で模様を付けてゆく蒔絵[まきえ]や螺鈿[らでん]も習得しなければならない重要な技術ですし、漆素地の制作や乾漆の技術も教えます。

昔は、こういう伝統工芸の世界では、優れた職人のところへ弟子入りして働きながら技術を学ぶ徒弟制度というものがありました。これは、技術を学び継承するという点では優れた制度でしたが、現在ではこのようなかたちで伝統工芸を継承していくのは難しい環境になってきています。だから私は、ここ富山大学のような国立の教育機関で伝統芸術を継承する人材を育成することは、現代においてはとても大切なことだと考えているのです。

富山大学 芸術文化学部の前身である、高岡短期大学の学生たちは、幸いとても素直に様々な技術を習得していってくれています。私は、そうした学生たちに、将来ライフワークとして日本の文化的側面を支えていってくれるような人材になってほしいと願っています。そして、06年4月からスタートする富山大学 芸術文化学部の学生たちにも同様であってほしいと切望します。

コンピュータを使った造形

林 暁先生

先ほど、漆工芸で「形」はとても重要な要素だと言いましたが、私が今一番興味を持っていることは、正にその「形」に関係があります。私は今、コンピュータ上で3Dの設計図を書き、そのデータを用いてNC切削機で自動切削する技術を研究しています。

先日、タケオカ自動車工芸というメーカーの小型電気自動車の車体のデザインをお手伝いしたのですが、その時もこのコンピュータを用いた造形技術を使いました。

まったく手を使わず、コンピュータだけで造形をするというのは、とても革新的なことなのです。コンピュータ設計だからこそ有利なこともたくさんあります。例えば、この電気自動車は小型なものですが、それでもボディ全体を一つのパーツで作り上げるというわけにはいきません。コンピュータ上で、複数のパーツのどの部分をどのように組み合わせるかを決めていくわけです。こういうことはコンピュータならではの利点ですね。

しかし逆に、コンピュータ上ではどうしてもできないこともあるんです。例えば、コンピュータ上の設計図では三次元のように表されていても、ディスプレイに表示されるわけですから、本物の立体のものを見ているわけではありません。その設計データをもとにしてNC切削機にかけると、どうしても事前のイメージと、実際に仕上がった形の間にギャップができることがあるのです。

そういう時は、ほんの少しだけ大きくコンピュータで設計して、最後の微妙な仕上げだけ手作業で行うということをしています。コンピュータの可能性の裏で、手作業でしか表せない、微妙で感覚的な要素というものも確実にあるのですね。

このように、自分の手を信用してする作業、コンピュータの可能性に頼る作業、この二つの方法を組み合わせていくことで、これからのモノ作りは、より大きな可能性を持つようになると思うのです。

夢を持ち続けてほしい

林 暁先生

林 暁先生

私は、子供の頃から模型作りや工作がとても好きでした。でも、子供にとって最後の仕上げの塗装作業は、とても難しいのです。大人の作るものを見て、こんな風にかっこいい作品を自分も作りたいといつも思っていました。そして、高校生になって、日本伝統工芸展というところで、漆芸作品と出会ったのです。その時は、日本にこんなにすごい塗装の技術があるんだ! と思いましたね。漆器の持つ深いツヤと輝きに魅せられたのです。きっと、当時のそんな純粋な思いが今の私の原点になっているのだと思います。

いつも学生たちには夢を持っていてほしいと思っています。きっと誰にも夢はあると思いますが、それをあきらめないで持ち続けていてほしい。モノ作りや芸術で食べていくというのは、たやすいことではありません。でも私は、モノ作りや芸術というのは、夢の具現化だと思うのです。その人の作品の中には、その人の夢の可能性が見えるのです。

今回私は前述のようにタケオカ自動車工芸の電気自動車のボディを担当したわけですが、これは普通なら考えられないことです。大手メーカーなら会社内で何十人という専門家のプロジェクトを組んで開発する自動車のデザインを、私のような一介の大学教員が手掛けることになったのですから。でも、これも私が夢を持ち続けていたから実現したことだと思っています。

モノ作りや芸術に携わることを目指す人にとって、夢を持つことはとても大切なこと。夢って、持ち続けていると、かなうものなんです! だからこそ、ここに来る学生たちには、いつも夢を持っていてほしいですね!

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